アルペジョーネの想い


概要:


 フランツ・シューベルトが作曲した名曲、[アルペジョーネ・ソナタ](イ短調 D821)をお聞きになった方は多いはずだ。
一般的にCDなどではチェロやビオラなどの代用楽器で演奏されるが、管楽器の編曲もある。


 音楽辞典によると、19世紀中期にこの楽器が流行して、ギターのように簡単なメロディと伴奏コードを奏でていたとされている。
1823年頃から約10年ほどは演奏愛好家がいたようだが、その後は衰退し現代ではほとんど観ることも、演奏されることもない。
 筆者はこの[アルペジョーネ・ソナタ]曲を自作のアルペジョーネ楽器で演奏したいばかりに、楽器づくりに挑戦しはじめた。
衰退した楽器本体が無くて、代用の楽器でこれほどまでに名演奏をされ親しまれている曲は歴史的にも類を見ないだろう。
こうした幻の楽器を追い求めるのも一種の音楽ロマンではないかと思う。




研究の動機


 25年ほど前、友人から1本のカセットテープをプレゼントされた。それはチェロの巨匠、ロストロ・ポービッチ氏が演奏している「アルペジョーネ・ソナタ」だった。

 注:現在のCDでは以下の録音と推察
Mstislav Rostoropovich(cello) Benjamin Britten(piano) July 1968 the Maltings, Snape,
London、キングレコード(KICC 9239)

 その何とも素晴らしく、そして切ない情感が漂う演奏に一気に魅了されてしまった。以来、アルペジョーネの情報収集に没頭している。


 中でも収集分析していく上で不思議なのは、本来の楽器で演奏している記録が皆無なことだ。代用のチェロやビオラなどの楽器で演奏するのが多い反面で、ピリオド楽器としての存在がないことに疑問を感じた。
 そんな単純な疑問からスタートして、いっそうのこと世界中の情報を探し出そうととんでもない挑戦の航海に乗り出してしまった。これが途方も無い苦難の連続になるとは思ってもいなかった。
 しかし日本の音楽大学や図書館では、百科事典などから同じ情報源を共有するだけだった。実際は新しいソースがなかなか見当たらなかった。また、楽器の全容写真はアルペジョーネ・ソナタの譜面にある表紙とCDの解説でしか観れなかった。
 楽器製作に関しては全く手がかりがないまま、しかたなくバイオリン工房やアマチュア製作者団体にヒアリングし、手探りで楽器づくりのイロハから学び始めた。





楽器製作の契機、出会い

おりしも楽器製作では運良く、以下の皆様に巡り合うことができた。

バイオリン関係 ・杉並の「バイオリン手造りの会」:橋本典先生・会員諸氏
・「趣味の工房」主宰:五嶋教夫氏
・富士山のすそ野、裾野市在住・バイオリン工房:角谷氏
・50年以上のベテラン バイオリン、チェロ製作者 對馬貞治氏
・オーケストラ・エミール団員:Vn 新村真司氏
・バイオリン工房VERDE 小林一郎氏
ビオール関係 ・古楽器工房:平山照秋氏
・3/4サイズ・チェロ改造のアルペジョーネを所有:長野昌生氏
・ビオラ・ダ・ガンバ:北島洋一氏、久保田夏男氏、須藤剛氏
・ビオラ・ダモーレ:故・喜多秀雄氏、肥前宏幸氏
弦楽器一般 ・CRANE 鶴田 誠氏

 とくに、弦楽器クラフト作家たちの集うホームページ、”CRANE(クレーン)”の鶴田代表のご紹介
もあって、ようやく楽器の全体写真(シュタウファーモデル)にご対面することになった。

以上、様々な達人諸氏の貴重なアドバイスも頂きました。この場をお借りして皆様に感謝申上げます。

 ともあれ、楽器演奏、木工楽器づくりにはゼロからはじめおり、これからの展開は珍道中になるだろう。
ここではもちろん音楽・楽器歴史を辿るような学術的なアプローチはできず、何分にも限られた資料
からの独断分析で偏った見方もあるかもしれない。
1832年 Staufer作
楽器博物館・プラハ

なお、楽器の図面や自作の図面、PCデータなどに関しては、商用以外の私的活用であれば、
お譲りいたい。

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アルペジョーネ研究家 Arpeggione scholar, Osamu Okumura Ph.D. 


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