楽器の概要 : アルペジョーネとは


名称
英文 : Arpeggione(伊)
邦訳: アルペジョーネ、アルペッジョーネ、アルペジオーネ
呼称: ビオロン・ギター、ギター・チェロ、ギター・バイオリンセロ、ギターレ・ヴィオロンチェロ
その他呼称 Guitar Violincello(Violoncello 英), Bogen-Guitarre,
Chitarra col arco ( bowed guitar ), Knie-Guitarre(膝で挟むギター),
Guitarre-Violonncell(独), Violoncell-Guitarre,  
Sentimental ‐Liebes-Guitarrre
Guitarre d'amour (仏、ギター・ダモーレ、ギター・ダムール、愛しいギター)


などとも呼ばれているが、すべて同類のギター・チェロ複合楽器に属する
構造的分類
定義・特徴:

アルペジョーネとはの定義
「チェロの演奏技術を応用したギター」とは、bowed guitarの直訳

(出典:音楽之友社、「標準・音楽辞典」、大橋敏成氏の定義、1991年10月より引用)



アルペジョーネ(Arpeggione)とは、1823年1824年にシュタウファー(Johann Georg Staufer)により発明された6弦楽器を用いてチェロのような構えで演奏するが、重音を出すことが容易であり、24のフレットを持つなどギターの特徴も併せ持つ。現在、演奏に使われることはほとんどない。
シューベルトがこの楽器とピアノのためのソナタ1824年に1曲(イ短調 D821)作曲している。現在では通常この楽器の代わりにヴィオラチェロ,稀にコントラバスを用いて演奏される。

"http://ja.wikipedia.org/wiki/a?¢a?≪a??a?,a?§a??a??" より

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

Chordophone-Lute-bowed-fretted 弓で弾くフレット付ギターの弦楽器

Metropolitan Museum of Art 、J. Kenneth Moore  ニューヨーク・メトロポリタン美術館、J.ケネス・モアの定義
Frederick P. Rose Curator in Charge, Department of Musical Instruments, Metropolitan Museum of Art
New York City, New York 10028-0198, Tel: 212 570-3813, Fax: 212 650-2111

http://www.metmuseum.org/Works_of_Art/department.asp?dep=18



The New Grove Dictionary of Music and Musicians (ed. Stanley Sadie, London/New York, 1980/1995, Vol. I) provides the following description of this instrument: "It was invented and made by J[ohann] G[eorg] Stauffer of Vienna in 1824 and was, in essentials, a bass viol with a guitar tuning ...".
The New Grove has a front-view photo of an arpeggione, which does not convey the depth (back to front) of the box or the impressively large size of the pegs for this six-stringed instrument. The arpeggione has no endpin; so it was held between the knees like a viola da gamba. An original Stauffer arpeggione is in the Musical Instruments collection of The Metropolitan Museum of Art in New York.


http://www.schubertsocietyusa.org/arpeggione.html



* ドイツ語のビオラ・ダ・ガンバ サイトでは、アルペジョーネについて以下のような定義をしている。
Meyers Konversationslexikon

Arpeggione (ital., spr. arpeddschone, Guitarre-Violoncell), ein 1823 von G. Staufer in Wien erbautes, jetzt schon wieder vergessenes, der Gambe ahnliches Streichinstrument, fur welches Franz Schubert eine Sonate geschrieben und Vinz.
Schuster eine Schule herausgegeben hat. Die sechs Saiten waren gestimmt in E A d g h e'.
http://susi.e-technik.uni-ulm.de:8080/Meyers2/seite/werk/meyers/band/1/seite/0864/meyers_b1_s0864.html



筆者・奥村 治の定義

アルペジョーネとは、チェロの演奏技術を応用し弓により縦弾きする6弦(E、A,D,G,B,eの調弦)をもつギターであり、ギター+チェロの複合楽器(ハイブリッド構造の楽器)を指す。

胴体: body ギターのように瓢箪(ひょうたん)で、C字のクビレはあるがコーナーのトンガリはなくなだらか。
ヴィオール族楽器のように内部に魂柱があり、表板の振動を裏板に伝道する。
サウンド・ホール:sound-hole C字型とF字型、変形の穴など様々
ヘッド:head ハンマー・タイプの独特な形
フレット:frets 22-24の金属フレットが付いている(一部はガンバような可変式フレット使用の変形もある)
演奏方法:play 膝で胴体を挟んで演奏。これはヴィオラ・ダ・ガンバ奏法に似ている
弓・運弓奏法:
bowing
ヴィオラ・ダ・ガンバのような湾曲した弓で演奏されることが多い。
演奏者によって弓を上から掴むフレンチ式、弓を下からつまむジャーマン式など様々ある
部材: materials 基本的にヴィオール族とギター族の部材を使用
糸巻:pegs 黒檀、紫檀、ローズウッド、その他各種
上駒・ナット:nut ヘッドと指板を繋ぐ接合部で弦をささえる支点
フレット:frets 一般的に真鍮、洋銀などの金属が主だが、その他インレイ用材もある
指板:finger board 黒檀、紫檀、ローズウッド、紅木など
ブロック:block 上部、下部、センター、クロスストリップ(魂柱を支える下部の力木)など各種、スプルース、またはその他
表板:belly スプルース、蝦夷松
裏板:back メープル、バーズアイ・メープル、カエデ
ライニング:lining メープル
横板:rib メープルの正目・板目
パフリング:purfing パフリング材、黒檀のチップ、またはグラスファイバーで衝撃やキズなどを保護
ネック:neck メープル、柘植、他
ペグ、テールピース:
pegs, tail-piece
メープル
駒:bridge メープル
魂柱:sound post スプルース 
力木:bass bar バスバー
正調弦: tuning e(ミ・mi)-h(シ・shi)-g(ソ・so)-d(レ・re)-A(ラ・ra)-E(ミ・mi)、これはギターの調律と同様。
低い音から高い音へ(6弦から1弦へ4度音程の=ミ・ラ・レ・ソ・シ・ミ=EADGHE=ホ・イ・ニ・ト・ロ・ホ、または 4・4・4・3・4 度など)。
ヴィンセンツ・シュスター(Schuster, Vincenz)の教本では、基本的に通常のギターの調弦と同様。

高音部3弦は金属の巻弦、低音部3弦はガット弦を使用する指示が見られるが、演奏者によっては曲目で変調弦をするとか、またはガット弦の変わりにチェロの巻弦を使用することもあるようだ。
弦:strings 当時はガット弦が一般的だが、曲によってはスチール弦も適応。
調弦について筆者は、6弦だとギターのように(ミ、ラ、レ、ソ、シ、ミ)と4度と3度を取り込んだ開放弦にするのが演奏しやすいと考える。
しかし曲によっては、ヴァイオリン族(チェロ)のように完全5度で(ド、ソ、レ、ラ)を組んだ独奏しやすい調弦も一考。
ところで、7弦に増やした場合では、チェロの調弦で(ド、ソ、レ、ラ)に(ミ、またはソ、かシなどの弦を共鳴として追加するのもどうだろうかと思案している。
ヴィオラ・ダ・ガンバ奏法で7弦に詳しい方は、弦、および調弦方法についてご教授願いたい。
音色
高音ではオーボエに類似を持つサウンド、低音ではバセットホルンに非常に近い音、その音色の愛らしさや親密さは全く絶妙であると、1824 年にマインツ の音楽ジャーナル誌は報じた。
他方では、すばらしく魅力的な音だけに、Guitarre d'amour と称された報告もある。
原作者
製作工房 Luthier Johann Georg Staufer (ヨハン・ゲオルグ・シュタウファー)、オーストリア人ギター工房
呼称:シュタウフェル)
音楽史
概要 19世紀中期 1823-1824年頃より約10年間流行したようだがその後は廃れ、現在は幻の楽器となっている
“ Romanticismの悲しい死"と題する論文 ( kanne 1823 )には 、Arpeggione の記述があり、1820年代の終わり頃 まで論調された。

アルペジオーネは、バリトンに匹敵する音とも表されたり、また、グラスハーモニカのエーテルのような美的世界をもったとも絶賛されたりした。
しかし1820年代の終りに再び流行はしたものの、1830年には衰退した運命を辿った。


現在では通常この楽器の代わりにヴィオラかチェロを用いて演奏される。その他、フルート、アルトサックスなどの管楽器でも演奏される機会がある。
(出典:Wikipedia

活躍歴
1823年3月初演 F.シューベルトが作曲したアルペジョーネ・ソナタを、同年にギター演奏家が5回演奏した。
同年 4月 一般音楽新聞 Allgemeine Msusikalische Zeitung に楽器の記事が掲載された。
1824年11月


  
F.シューベルトがアルペジョーネ楽器とピアノのためのソナタ(イ短調 D821)を作曲。
 英: Franz Schubert、 Sonata in A Minor for Arpeggione and Piano, D.821
 独: Franz Schubert、 Sonate in a-moll fur Arpeggione und klavier, D821

(出典:Schubert Arpeggione Sonata, score cover (showing another unique instrument)
 ガスパール・カサド編曲: 管弦楽伴奏版(Wikipedia)

1825年
教則本
















 Vincenz  Schuster(ヴィンセンツ・シュスター)が、ウィーンのディアベッリ社から教則本を出版。

(ゲオルグ・シュタウファー氏によって新しく考案されたギターレ・ヴィオロンチェロのための教則本;
独:Anleitung zur Erlernung des von Hrn. Georg Staufer neu erfundenen Guitarre-Violoncells)

初版本は現存しないが、ファクシミリ版がフランスの楽譜社・フゾー(Fzeau) で販売している。
フランス本社: http://www.fuzeau.com/     facsimiles@fuzeau.com

(出典:Musik fur Arpeggione, Alfred Lessing, Jozef De Been houwer Harald Mohs, FCD 368392

*アカデミア・ミュージック社(東京)では、ファクシミリ版を取り寄せることができる。
(アカデミア商品コード:No.232040, 航空便 約6,350円)

*(株)ホマドリームでは、アルペジョーネ・ソナタ、ファクシミリ楽譜を販売している。
フランツ・シューベルト、アルペジョーネ・ソナタ、[自筆譜ファクシミリ]フィリップ・ミュラー校訂、
解説64頁+楽譜ファクシミリ34頁
、2006年8月現在、5,565円(税込価格)。
〒171-0043東京都豊島区要町1-6-1-102、 tel 03-5986-2422 fax 03-5986-2525
http://www.homadream.com/catalogue/NOTES/FZ4898.htm

*パリ国立図書館には自筆のファクシミリが所蔵されている。



フランツ・シューベルト、アルペジョーネ・ソナタ、[自筆譜ファクシミリ
http://gallica.bnf.fr/anthologie/notices/01175.htm

Auteur Schubert, Franz (1797-1828) [Compositeur]
Titre Sonate pour arpeggione et piano, la mineur, D. 821. - [Partition].
Creation / Publication [1824]
Description Manuscrit autographe. - 1 partition (12 f.) ; 24,4 x 31cm.
Notes Fonds du Conservatoire de Paris. Legs Charles Malherbe.
Sujets Malherbe, Charles (1853-1911) -- Bibliotheque
Arpeggione
Sonates (arpeggione et piano) -- 19e siecle
Musique instrumentale -- Autriche
Musique -- Manuscrits
Cote Bibliotheque nationale de France, Departement de la Musique
Ms. 304

1826年 ウィーンの チェリストであるヴィンセンツ・シュスターが、このアルペジョーネ楽器で演奏した。
1871年 初版楽譜出版、出版者はJ.P.ゴットハルトで、ウィーンのピアニスト・ユリウス・エプシュタインに捧げられた。
楽器出所
ピリオド楽器としては、ライプチッヒ大学楽器博物館 1824年製、ニュルンベルグ国立楽器博物館 1825年製、プラハ国立楽器博物館 ウィーン 1832年製などがシュタウファーとその弟子ミッテリスの作品である。
その他はこれらのコピー(レプリカ)楽器と属される。
参考文献
音楽之友社、「標準・音楽辞典」、大橋敏成氏解説、1991年10月
音楽之友社、「シューベルト」作曲家別名曲解説、ライブラリー17、1994年11月
音楽之友社、「最新名曲解説全集・第12巻、室内楽曲U」、村田武雄氏解説、1980年10月
平凡社、「音楽大事典」、杉田佳千氏解説、1988年
Wikipedia - Article - History - License:GFDL

*楽譜:ZEN-ON MUSIC COMPANY, Barenreiter Urtext Series 29
Franz Schubert、 Sonate in a-moll fur Arpeggione und klavier, D821

* Schubert's Arpeggione sonata, Revisited  by Discordia Music, by Michael Hovnanion and David Cardon.
http://www.discordia-music.com/Arpeggione_Project/introduction.htm
HPでアルペジョーネ・ソナタの楽理研究をしている興味ある論文集より





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