アルペジョーネの小道(エッセイ)

ここでは楽器、そして楽曲「アルペジョーネ・ソナタ」に関して、もろもろ語りたい。



これらの名前をご存知?


アルペジョーネ、アルペッジョーネ、アルペジオーネ、ビオロン・ギター、ギター・チェロ
ギターレ・ビオロンチェロ、
ボーゲン・ギター、ギター・ダモーレ

Arpeggione(伊)Guitar Violincello(英・独)、Bogen-Guitarre(伊)、Chitarra col arco(伊)、 bowed guitar (英)
Knie-Guitarre(伊)、Guitarre-Violonncell(独)、Violoncell-Guitarre(独)
Sentimental ‐ Liebes-Guitarrre(伊・独)、Guitarre d'amour (仏)
・・・・・これらすべて同じ楽器、ギター+チェロを指す。
上記のようにアルペジョーネ、アルペジオーネ、 Arpeggioneはイタリア語の呼称である。




アルペジョーネという楽器に対する私見:

比較項目
<利点 Pros.>
<不利点 Cons.>
演奏 *ギターが弾ける人なら簡単にメロディと伴奏コードを習得できる

*瞬発力があって、中ー高音部の明るいメロディを演奏できる


*高音部の急速なパッセージを自由に演奏でき、リズムの変化を容易に与えられる
*現代ギターに比べ、弦の張り(テンション)が弱く、音量が足りない

*6弦の間を弓で移弦するのがむつかしい

製作 *ギターのように製作工程が簡単。 *丸みのある指板に24の金具フレットを打ち付ける点で、高音部になるにつれて音程の狂いを生ずる。
これは楽器製作上でもっとも難しい部分といえる。


*6弦を載せる指板や駒探しが大変
(筆者の場合はビオラ・ダ・ガンバBASS用を代用したが、調整が難しい)

音色 *甘美な音色 *チェロに比べ軽く深みがない



チェリスト・鈴木秀美氏、音楽評論家・佐々木節夫氏らの見解

 参考までにアルペジョーネ・ソナタについて、チェリスト・鈴木秀美氏とピアニスト・小島芳子氏の演奏、音楽評論家・佐々木節夫氏らのCD解説集から意見を拾い整理した。

比較項目
<利点 Pros.>
<不利点 Cons.>
音量 *音量が狭く限定され
*チェロに比べ深みがない
演奏 *3度や半音階が容易
*金属フレットが音程を確実にする
*複雑な和音奏法も容易
*表現の幅が限定される
*ポルタメントが不可能
これらの点を鈴木秀美氏は、5弦のピッコロ・チェロで、(1弦から、E・A・D・aなどの調弦)により改善演奏している。
構造 *指板と殆ど高さが変わらないフレットを用いれば自由な演奏が可能 *金属フレットのため微調整が高音域わずかな狂いあり問題、実用に耐えない
音色 *オーボエやバセットホルンのような美しい音
*高音域での透明感が高い
*透明感のあるゆったりとしたメロディ、長いスラーの表現力がある
*透明感のあるゆったりとしたメロディ、長いスラーの表現以外には特徴がなく限界がある


 鈴木氏から当HPへのご指摘もあって、当HPを大幅に見直し修正をした。(8.06.2006)

 以下、氏からのメールを抜粋し転載する・・・・・・
*Schusterの教則本は、英独仏3カ国語に訳されアルペジォーネの自筆譜のファクシミリと共にFuzeau社から出版、アカデミアなどでも入手できると思う。
*指板と同じ高さのフレットについて、それは本当に可能なものなのか。
フレットの第一の存在理由は全ての音を開放弦と同じくすること。
アルペジォーネの透明感も、一つにはフレットによって、そして二つには低弦2本の共鳴弦的働きによってできている。
ですから弦は指ではなくフレットで留められなければならず、そのためには高さが必要では?
またもう一つ、フレットが金属であることも弓奏楽器としては問題のあるところだと思う。ガットなら柔らかいが。

 結論としては、鈴木秀美氏が楽器の技術面や演奏方法の厳しいご指摘はあるが、構造的には指板と殆ど高さが変わらないフレットを用いれば自由な演奏が可能という嬉しい課題を示されている。




筆者の改良・改善案:

*金属フレットを調整する(ポルタメント奏法も可能なようにする
*フレットによる高音域の狂いを正す方法として、指板に平坦に近づけてでっぱりを少なくする
、またはネジで 指板を動かし弦高調整ができるフライングフィンガーボードという技術を検討する
(このシステムであると、エレキギターになって、中世には存在していないので復元楽器とはいえない。導入はおそらく無理か?)
*胴体のプロポーションを調整する
*低音部の深みある音の追求する(ギターの胴厚みより厚く、110mmほどとする)

・・・これらの案によって、ピリオド楽器に近づける音色の工夫をするのが後任の製作工房の使命かと思う。




楽曲「アルペジョーネ・ソナタ」はハンガリー音楽の影響が強い:

 楽曲が創作された背景はどんなものか、興味がないだろうか。シューベルトという作曲家の生涯でどんな転機があって、その曲ができたか?音楽事典や多数の解説集、そしてCDの概説を読んでみるのも面白いものだ。
 シューベルト作曲の中でも謎なのは、アルペジョーネという楽器を想定した単独な曲であり、生涯で1作だけだからだ。その他の曲を一切創作していない。彼はシュタウファー工房で製作された新しいこの楽器に興味深々で、当時の新し物好きというモダンボーイだった。

 音楽評論家、村田武雄氏の解説によれば、”ギターにチェロに加えたような性質の音色がハンガリー風の郷愁を感じて作曲のモチーフにした”らしい。 同書の年譜を辿って見ると、作曲された1824年、彼は男盛りの27歳ではあったけれど、前年1823年からずっと健康を害して自暴自棄になっていた。

 日記には、「私は毎晩寝床に入るとき、もうふたたび眼が覚めないようにと願う。そして朝になると、ただ前日の悲しい思いだけがまた私のところにやってくる。こんなによろこびも親しみもなく私は日を過ごしている。・・・」
 また、「私の作品は、音楽の理解と、私の悲しみとのあらわれで、・・・悲しみによって創られた作品のみが人々を最もたのしませることができるように思われる。・・・」とも記されている。
 今で言うところの”欝病シンドローム”なのではなかったかと疑われるが、その反面で「美しい水車屋の娘」歌曲集、「ピアノ・ソナタ」イ短調作品143などの名作を残していた。
 村田武雄氏の分析はこうだ。1824年夏に彼は友人一家(エステルハージ候)とハンガリー郊外に旅行して、そこで伯爵令嬢とのロマンスが生れた。さらにこの地方でスラブやマジャールという音楽に触れる機会がたぶん多くあったかもしれず、事実、「弦楽四重奏曲」イ短調の終楽章や作品140「大二重奏曲」などは、ハンガリアン民謡のメロディがそこかしこにあらわれている。


 楽曲に何故か拡がっている情緒性や悲しさ、せつなさ。これは第一楽章テーマ、そして第二楽章アダージョに漂う不思議さの由縁は、どうやら乙女への愛焦がれる男心の動き・葛藤をそのまま表現したのではなかったか?
先の作品140は、当時この令嬢が17歳で彼はピアノ連弾をするために書いたといわれている。其の流れがこのアルペジョーネ・ソナタにも大きく影響を及ぼし、ラブ・コールのような哀愁と憧憬のメロディにあらわれているようだ。
 しかしそうかといって、突然あらわれる激しいテンポにゆらぐ奔放なシーン展開もある。第三楽章アレグレットのロンド主題だ。
ハンガリーの草原を乗馬で彼女と楽しむかと連想されるほどの陽気で軽快さが感じられる。ハンガリーダンスのようでもある。
「ハンガリー風喜遊曲」のひとつがこの曲にあげられるというのも、その背景を辿ってみるひとつの発見があった。


出典:音楽之友社、「最新名曲解説全集・第12巻、室内楽曲U」、村田武雄氏解説、1980年10月




シューベルトとエステルハージ候との関係:
 

 シューベルトは、友人のエステルハージ候と親しかったと伝記にある。エステルハージ候は音楽好きで、シューベルトを娘たちのピアノ教師として雇い、ハンガリーにある別荘まで誘っている。
では、シューベルトにとってパトロンだったエステルハージ候とはどんな人物だったのか、詳しくは判っていない。

 武蔵野音楽大学楽器博物館には、このエステルハージ候が愛好したとされる楽器のバリトン(Baryton)・レプリカ版が展示されている。(出典:武蔵野音楽大学楽器博物館パンフレットより)

 写真に見られるように、縦型で多数の共鳴弦をもつ不思議な楽器だ。ビオラ・ダ・ガンバのように指板にガット弦を巻いたフレットをもち、他方ではテール部分にチェロのようなエンドピンがある。

 実際に展示室のケース越しから目算したかぎりでは、チェロでいう7/8サイズ程度の小ぶりな楽器で、おそらく股に挟んで弓で弾く楽器らしいが、これも多数の要素を集めた複合楽器のひとつだ。

 年代的には17世紀末に作られた中〜低音域の弦楽器だが、エステルハージ候はこの楽器の名手で、ハイドンのパトロンにもなっている。ハイドンは、多数のバリトンの作品を書いたと記されている。


 アルペジョーネの声部は大半が高音部記号を用いており、実際の響きより1オクターブ高く記譜されている。この楽器はバリトンと同様に、ヴィオラ・ポンポーザと明らかに似ている。


 エステルハージ家はウィーンの名門貴族で、サロンコンサートをおこなったと歴史書には記されている。ハイドンの時代からエステルハージ家も数代を経たが、そのうちの後継者は必ずしも音楽好きではない子孫もいたようだ。
しかしそうはいっても、シューベルトはこれほどまでに親しかったエステルハージ候の愛用楽器・バリトンのために何故作曲しなかったのだろうか、疑問が残る。

親交のあるバリトン奏者のために、ハンガリーの旅愁をモチーフに作曲するのが尋常だろう。

 アルペジョーネも縦弾きの楽器であるが、バリトンのような複雑な共鳴弦の楽器ではなく6弦といたってシンプルだ。バリトンの中ー低音域に比べると、アルペジョーネはテノール音域で中ー高音がもっとも適合した楽器ではあったし、当時の新星(ニューウェイブ)なモダン楽器に注目されてはいた。


この簡素でテノールの音域である斬新な楽器は新し物好きなシューベルトが惚れ込み、エステルハージ候に対してあっといわせるサプライズを目論んでいたのではないか、と勝手に想像してしまった。



シュタウファー・C穴孔モデルに関する私見:

       

写真: シュタウファー・C字孔モデル

(出典: Schubert's Arpeggione sonata,  Revisited, by Discordia Music, )

http://www.discordia-music.com/Arpeggione_Project/introduction.htm
HPでアルペジョーネ・ソナタの楽理研究をしている興味ある論文集より転載。


 このシュタウファー・モデルは、胴体のくびれ、C字の大きななだらかなサウンド・ホール(音孔)が特徴。

そしてヘッド部分には側面がハンマー・タイプ、先端には欧州の中世期国旗に良く観られるデザインが施されている。
中世に流行したマンドリンのヘッドにも同じ傾向の文様が見られる。
おそらくバロックやロココなどの様式を継承したスタイルかもしれない。
これらのデザイン時代考証については、弦楽器工房の大集団であるホームページ、CRANEを参照されたい。





アルペジョーネをベルリンで視察されたアーティスト:

 コントラバス奏者、ピアニスト、指揮者として活躍されている平田昭浩氏は、ベルリンの楽器博物館でシュタウファー作楽器を目の辺りにしたエッセイを連載されている。おそらくは上記の左写真・シュタウファー・C字孔モデルだと推察される。
演奏家でおられるので、コントラバス、ピアノ、その他の楽器との相性を一番お分かりになる方と思う。
http://www.eonet.ne.jp/~basshaus/arpeggione's%20episode.htm


 

プリンストン大学のHPでも楽曲研究:

PRINCETON UNIVERSITY CONCERTSのページで、Schubert: Sonata in A Major for Arpeggione and Piano, D.821に関する楽理研究が報告されている。
しかし論文中、Sonata in a−moll(A Minor)(D821)とすべきところを、A Majorと誤記の箇所がみられた。単純なミステイクを校閲していない。
http://web.princeton.edu/sites/puconcerts/qx05A1notes.html




楽器教則本の著者、Vincenz Schusterの記事:

Juilliard | The Juilliard Journal Online では、アルペジョーネの解説とともに教則本の著者の概要を紹介している。

当時、この研究リーダーであったMr. Nicolas Deletaille,(Cellist, BELGIQUE)と筆者は、この記事が縁でインターネットからお付き合いすることになった。

... Schubert dedicated the composition to the guitarist Vincenz Schuster, who eventually became an arpeggionist and wrote a ... As a cellist, I played, of course, the Schubert sonata in a ...

www.juilliard.edu/update/journal/470journal_story_0205.asp




ニコラス・デレタイル氏(Mr. Nicolas Deletaille),(Cellist, BELGIQUE)との親交




前記Juilliard | The Juilliard Journal Online との関連で、ベルギーのチェリスト、ニコラス・デレタイル氏の活動を紹介する。

D氏はジュリアード音楽院の学生だった時、アルペジョーネの研究プロジェクトのリーダーだった。
この記事が縁でインターネットから、筆者は彼とお付き合いすることになった。

Dear Sir,
Thank you for your email about the arpeggione. Thank you for your interest.
Can I send to you a CD with a arpeggione concert that I did (with the Schubert Sonata) at the following address?:
Osamu Okumura ・・・(中略) 
I hope that this CD will please you. 
Best wishes with your research!
Nicolas Deletaille






その後、D氏に筆者のホームページ開設を案内したところ、以下のようなメールを受信した。(Aug.10.06)

Dear Osamu Okumura,
Thank you for having informed me about your new Web Site!
It is really very interesting for me to see how well documented you are about the arpeggione. I recognize the images and the Web links that I already visited for my own research about the instrument and I wish I could also understand the text that you wrote as well. Do you plan in the future to make an English translation of it?
(中略)
I can also inform you that I recorded the Schubert sonata last January in Florence with the famous viennese maestro Paul Badura-Skoda on the pianoforte, and I expect that the CD could be issued in 2007. That would be the first time that a world famous player endorse the arpeggione-pianoforte original version for a recording! 
I recommand to you the new page I did about my arpeggione: http://www.nicolasdeletaille.com/en/thema.php?thema_id=11
There is also another web page by a Belgian matematician about a specific experience with the arpeggione: http://users.belgacom.net/lb/laurent/arpeggione.htm
Perhaps you did not find it and this will interrest you as well.
I am planning to create an "arpeggione website" in the future, and I will of course mention yours, which is, as far as I know, the most complete and actual source about arpeggione.  
I congratulate you for your resaerch and I look forward keeping contact and exchange information.
Best regards,
Nicolas Deletaille


簡単に要点を挙げる;

*将来、英文のサイトを掲載してほしいとの要望があった。

*2007年CDをリリース予定:
 (アルペジョーネを使ったレパートリィにより、ウィーンの大ピアニスト、Paul Badura-Skodata とフィレンツェでの録音を計画中)

*アルペジョーネの新しいページ紹介:
最新のレパートリィ情報、楽器写真などは大きな価値がある
 http://www.nicolasdeletaille.com/en/thema.php?thema_id=16

*彼は「アルペジョーネの完全なウエブサイト」計画をもっている:
非常に楽しみで期待したいし、筆者も協力を惜しまない

*アルペジョーネの楽理研究、楽器奏法の研究サイトを紹介している

Etude for Arpeggione;A computer generated study for the arpeggione (2001-2003)

a Belgian matematician about a specific experience with the arpeggione: http://users.belgacom.net/lb/laurent/arpeggione.htm
  
*Nicolas Deletailleのバッハ、無伴奏チェロ組曲 CDリリース



The record Label is Fuga Libera
(Belgiumwww.fugalibera.com 
(FUG529)

ニコラスがアルペジョーネでCDをリリース

I would like to inform you that my CD with the Schubert Arpeggione Sonata played on arpeggione and fortepiano instrument are to be released in 2 weeks. (Nicolas Deletaille, arpeggione; Paul Badura-Skoda, fortepiano)
  
Paul Badura-Skoda is playing a Conrad Graf fortepiano (ca. 1820) from the Florence "Accademia Bartolomeo Cristofori" Collection.
 
The recording has been made in Florence in January 2006. 
 
The CD also includes Schubert Quintet in C major with two cellos where I play with the Quatuor Rosamonde (France). The Quintet has been recorded in June 2007 in Paris
 
I also made very beautiful pictures of my arpeggione. I send you in attachment the CD cover but I can send you later other beautiful pictures of my instrument too. 
 
I suppose that Fuga Libera Web Site will advertise the release of their CD and I will be able to send you this informaton at that time, but I already wanted to let you know this news!
 
All the best,
Nicolas Deletaille



米国シューベルトソサエティがアルペジョーネの話題を取上げた


米国シューベルトソサエティは、アルペジョーネがシューベルト研究の展望を広げると論じている。
アルペジョーネを通じフランツ・シューベルトの作曲の動向が大きな学際的アプローチを促進することを示している。

オリジナル楽器はニューヨーク・メトロポリタン美術館の楽器収集にある、シュタウファーのC字孔モデルを対象としている。

An original Stauffer arpeggione is in the Musical Instruments collection of The Metropolitan Museum of Art in New York.


http://www.schubertsocietyusa.org/arpeggione.html

参考までに、筆者は米国シューベルト・ソサエティのホームページでメトロポリタン美術館の所蔵を発見し、以下の英文メールを送信した(Aug.14.06)


Dear Executive Director;
I am looking for an orginal Stauffer Arpeggione in the Musical instruments collection of The Metropolitan Museum of Art in N.Y.
I saw that photo in the web site of the Schubert Society of the USA.
I am a scholar of Arpeggione in the Japanese. Recently, I made up the web site of "the world of Arpeggione".A new URL is the following: http://arpeggione.web.fc2.com/
I would like to introduce an article in your web site and the photo of Arpeggione. I am researching a thing such as musicology of arpeggione sonata which Schubert composed in the history of arpeggione.
Then, I am working the instrument Arpeggione as the original model, too.
Yours sincerely
A Scholar Arpeggione, Japan
Osamu Okumura Ph.D.





*アルペジョーネは、ニューヨーク、メトロポリタン美術館にも所蔵されている



ARPEGGIONE

Popular only for a few years
after its invention by Staufer
in 1823, this hybrid instrument combines a cello body with a
guitar-like fretted neck and 6 strings.

Schubert wrote a famous sonata
for arpeggione with piano accompaniment.

Johann Georg Staufer, Vienna 1831


ケネス・モア氏(J. Kenneth Moore)より筆者へメールが返信された。

所蔵されている楽器(上記写真)の仕様が明確に記載されていた。(Aug.29.06)


このアルペジョーネは、シュタウファ作で、C字孔モデルで弦長は604mmで、筆者のモデル667mmよりかなり短い。

美術館の分類体系は、楽器の仕様を整理する上で非常に参考になる。

日本の楽器博物館ではこれほどまでの詳細は記載されていない。

分類体系の世界標準化を早く統一していただきたいものだ。




Arpeggione Specification of Metropolitan Museum of Art

Object Name:
対象名
Arpeggione アルペジョーネ
Classification: 
分類
Chordophone-Lute-bowed-fretted 弓で弾くフレット付ギターの弦楽器
Maker: 
製作者
Johann Georg Staufer ヨハン・ゲオルグ・シュタウファー
Date Label:日付 1831 ラベル記載の製作年
Object Place:
場所
Vienna, Austria, East, Europe ウィーン、オーストリア、ヨーロッパ
Medium:
部材                   
Wood, various materials 多様な木材
Description:
記述
Spruce belly, 2-piece back of figured maple, スプルース、杢目入りカエデ・剥ぎ合わせ
ribs of figured maple, 杢目入りカエデ・リブ
lowest rib in 2 parts separated by purfling strip, hard, brittle, yellow varnish with fine craquelle; 
細片優れた craquelle を持つ堅い壊れやすい黄色のワニス
hardwood neck stained  black and varnished, grafted  pegbox of hardwood (pear?)
黒く着色された硬材ネックを purfling することによって分離された 2 パートのリブ、及び、硬材 ( 西洋ナシ ) のニスを塗られた接がれたpegbox
stained black and varnished, escutcheon-form head with inlaid ring 6-point star of black abalone and mother-of-pearl, fingerboard of back-stained pear? with 23 inlaid German silver frets, patent mechanism maple?

pegs stained black with inlaid ring of mother-of pearl with black dot,  pear? tailpiece stained black, stained beech and maple purfling with 3 stripes of equal thickness, spruce corner blocks  and linings, maple? upper block, later synthetic endpin holder.
黒く着色されニスを塗られたヘッド黒いあわび、真珠で 6 箇所にスターがはめ込んだリング、
、黒いドットを持つ 真珠のインレイしたリング、黒く着色されたカエデ・ネックに23 の洋銀によるフレット 釘、
黒く着色された尾片とブナで等しい厚さの 3 本のストライプの合わさったパフリング のあるカエデの指板、
小さなコーナーブロック、カエデのライニング 、エンドピン ホルダー
Dimensions:
仕様
Total L. 全長: 115.7 cm (45-9/16 in.);  Body L. 胴長: 68.2 cm (26-5/8 in.);
Widths 幅: UB. アッパー・バウツ. 33.3 cm (13-1/8 in.): MB.  ミドル・バウツ. 23.2 cm (9-1/8 in); 
LB. ロワー・バウツ 39.5 (15? in.);  Sto. 34.2 (13-3/8 in);
String L.弦長 60.4 (23?);
Mark(s):
印字                           
(printed on label ラベル) Joannes Georgius Staufer/fecit Viennae anno 18(MS)31;  (stamped 印) "D.R.G.M."
Notes:  In 1832 Staufer and his son patented a model for bowed instruments having the bridge positioned exactly at middle of belly length; therefore F holes are higher than normal. 
This instrument seems to have such proportions and so may combine the idea of the improved violoncello with the arpeggione, invented in 1823. 
The adjustable neck and patent pegs are typical for Staufer.  (Rudolf Hopfner, March 1997.)

1832 年に シュタウフェと息子は、胴体の中心に配置された駒を持つ弓で弾く楽器の特許を取った ;
1823年に改良されたチェロについてのアイデアを アルペジョーネという名前で発明された。

F 字孔が大きく、調節可能なネック、特許釘(金属フレット)は、シュタウファーの特徴である。
( ルドルフ・ホフナー記述 、 1997 年 3 月 )
The stamped mark D.R.G.M on the endpin clamp refers to a design registered by the Deutsches Reichs Gebrauchs Muster, in effect until World War Two.
D.R.G.Mのスタンプは、第二次世界大戦まで Deutsches  Reichs  Gebrauchs  Muster によって記録された設計による
Constructed according to Viennese inch measure.ウィーンのインチにより測定
Catalogue information compiled by R. Hopfner (1997).
R. ホフナーにより編集されたカタログ情報

From Harvey Turnbull's The Guitar from the Renaissance to the Present Day: 
H.ターンブルは、ルネサンスから現代までギター工房は以下を解説する :
"In 1822 the German violin and lute maker George Staufer was granted a license to work in collaboration with Johann Ertel on improving the construction of guitars. 
1822 年、ドイツのバイオリン、リュートメーカー G.シュタウファーは、ギターの機能を向上させる際、 J.エーテルと共作しライセンスを取得。
Two of their improvements were the raising of the fingerboard above the table to create a better tone and the use of an alloy of brass, copper, silver and arsenic
-- used by button makers in the manufacture of white buttons --
instead of silver or ivory for the frets to provide a more durable material."  (See references card)

改善は 2 つある、まず、良いトーンを出すため、指板に銅、真鍮、銀を用いたフレットを使用し、――白いボタンの製造におけるボタンメーカーによって使われるヒ素――、そして、銀、耐久性の材料を供給するための象牙などを用いた。
The arpeggione's adjustable neck is very similar to those seen on early C. F. Martin guitars (from 1834 on); 
アルペジョーネの調節可能なネックは、早期の C. F. マーチン ギター ( 1834年代 ) で見られたものと非常に類似する ;
C. F. Martin, the famous American guitar maker, worked with Stauffer (sic) in Vienna, becoming foreman of Stauffer's shop before migrating to New York in 1833. 
Stauffer was originally a guitar maker.  See Mike Longworth,  Martin Guitars;  a History  (1975), pp. 3, 16-17.59.105

"no reason to question its authenticity"  F. Hellwig (May 1978).
シュタウファーは、ウィーンで元来ギターメーカーであった。有名な米国のギターメーカーのマーティンは、、ニューヨークへ 1833 年に移住する前に シュタウファー工房の職長で勤めていた。
1975 年製のM.ロングワース著、マーティンギターを参照されたい。
F.ヘルウィグの鑑定により。
For information on Staufer's invention and description of another arpeggione, see Georg Kinsky, catalogue of Musikhistorisches Museum von Wilhelm Heyer in  Coln, vol. 2,  p. 174-175; f
urther on Staufer in Paul de Wit, Geigenzettel alter Meister...(2nd  ed., 1910),
part 1, p. 14 and table 33;  see also Anthony Baines, European and American Musical Instruments,
p. 23, and ill. 141.
Black and White Negative:    170739
別途、シュタウファーのアルペジョーネの発明、及び、記述に関する情報は、以下のカタログを参照されたい。
Credit Line: 
所蔵購入
Purchase, Rogers Fund, 1959 ロジャーズ資金、 1959 年
Information:
情報源

Metropolitan Museum of Art  ニューヨーク・メトロポリタン美術館
J. Kenneth Moore  J.ケネス・モア
Frederick P. Rose Curator in Charge, Department of Musical Instruments, Metropolitan Museum of Art
New York City, New York 10028-0198, Tel: 212 570-3813, Fax: 212 650-2111

http://www.metmuseum.org/Works_of_Art/department.asp?dep=18





楽器教則本の著者、Vincent Schusterの初版本・所蔵先を発見!


シュスターのアルペジョーネ教則本(初版)に関する情報源を見つけることができた。
これは、国際音楽資料情報協会(IAML;
IInternational Association of Music Libraries, Archives and Documentation Centres) 
日本支部事務局長・国立音楽大学附属図書館特別資料部・長谷川由美子氏のご協力によるものである。

情報源は、オーストリア国立図書館に所蔵されていることが判明した。
概要を閲読できることは、音楽史上でシューベルト研究に大きな貢献になるはずである。
と同時に、アルペジョーネの演奏方法、演奏技術を解明できるにちがいない。

以下は、長谷川氏からの受信メールである。(Aug.29.06)


奥村様

Schuster の初版本を持っている図書館の情報についてお知らせします。
世界の音楽図書館員のネットワークに問い合わせを出したところ返事がありました。
ただ、原本ではなくマイクロフィルムです。

Notiz: Dear Collegue, The book you were looking for can be found in the Musiksammlung of
the Austrian National Library (it has a separate catalogue).
With kind regards, Dr. Erwin Barta Archivdirektor Wiener Konzerthaus
__________________
Autor In Schuster, Vincenz
Titel Anleitung zur Erlernung des von Hrn. Georg Staufer neu
erfundenen Guitare-Violoncells. Mit einer genauen
Abbildung des Instrumentes. (Git.). - Wien: A. Diabelli
o.J. Nー.2052. 15 S.
IMAGE Zettel
1.Signatur SA.75.A.80 Mus 31
1.SW-Kette Musikdruck /
2.SW-Kette Solo instrumental /
Mit freundlichen Gr・en,
Ben・zungsabteilung
ヨsterreichische Nationalbibliothek


IAML日本支部事務局長
国立音楽大学附属図書館特別資料部
長谷川由美子





楽器教則本の著者、Vincent Schusterの初版本・マイクロフィルムを入手!

マイクロフィルムをついに入手した(10.11.06)
マイクロフィルムと日本語訳を希望の場合は有料となります。


 
IAML日本支部事務局長、国立音楽大学附属図書館特別資料部・長谷川由美子氏のご協力で、
スイス・バーセルにある図書館特別資料室に情報源があることを知らされた。(Aug.31.06)



The Library of the Musik-Akademie in Basel holds a copy of the book you request. See:
http://www.mab-bs.ch/bibliothek
/ Mattias Lundberg (Rare Collections, Music Library of Sweden)





奥村モデルがimage.Google.comで検索、このページに紹介された!

 筆者の楽器がグーグルのイメージ写真集に、Arpeggione.jpgとして本ページの筆頭に掲載されている。

http://images.google.com/images?q=arpeggione&ndsp=20&svnum=10&hl=ja&lr=lang_ja&oe=EUC-JP&inlang=ja&start=160&sa=N



チェコの楽器研究家・Dr.Pavel Kurfurst著書にアルペジョーネの情報を発見

オランダ在住・堀井氏のご紹介で、Dr.Pavel Kurfurst著書、HUDEBNÍ NÁSTROJE (Music Instruments)にアルペジョーネの記事を探すことができた。故Pavel Kurfurst 博士はチェコMasaryk大学の元教授。出版社はTOGGA、チェコ。

MUSICAL INSTRUMENTS
- the author was prof. PhDr. Pavel Kurfurst, CSc. (1940-2004) professor of the Department of Musicology of the Faculty of Arts of the Masaryk's University in Brno; he is regarded internationally as a top-ranking specialist in his field
- the book of his is an extensive original work which makes good use of his many years of scientific investigation.

http://www.togga.cz/togga_html/hn_inside.htm



アルペジョーネの弓はチェロ用だった

フランスの歴史的なパスキエ弦楽合奏団のアルペジョーネ・ソナタCDを聴いた。

そのCD解説書には、アルペジョーネのチェロ用の弓で演奏すると明記されていた。

このソナタは、シュタウファーとアルペジョーネの教則本を書いたヴィンツエンツ・シュスターの2人の依頼で作曲された、とも印されている。

CDはチェロで演奏しているが、フランスのエスプリと気品に満ちた魅力的な芸風が感じられた名演奏である。

Franz Schubert, Regis Pasquier, Bruno Pasquier, Roland Pidoux, Jean-Claude Pennetier
KKCC9209



アルペジョーネの曲はこんなにある


* アルフレット・レッシング氏のCDには、以下のよう作曲家の曲が集められている。



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* Vincenz Schuster
- Drei Stucke (1825) fur Guitarren - Violoncello und Guitarre, Wien 1825
Tempo di Poacca A-Dur (nach Lois Spohr)、Adagio E-Dur (nach Bemhard Romberg)、
Moderato A-Moll )Lied: Schone Minka)、Tempo di Polacca (da capo)
* Anton Diabelli (1781-1851)
-Andante con moto A-Dur (Arpeggione und Gitarre)
* Friedrich Burgmuller (1806-1874)
-Drei Nocturnes (Arpeggione und Gitarre)
Andantino A-Moll、Adagio cantabile F-Dur、Allegro moderato C-Dur
* Franz Schubert (1797-1828)
-Sonate fur Arpeggione und Pianoforte A-moll (1824)
Allegro moderato、Adagio、Allegretto
出典: Musik fur Arpeggione,Alfred Lessing, Jozef De Beenhouwer, Harald Mobs, FCD368392-CDジャケット解説より引用


* ダームスタット氏のCDは、以下のよう作曲家の曲が集められている。




http://www.sim.spk-berlin.de/deutsch
/mim/arpeggione.html#
* Ludwig van Beethoven (1770-1827)
-Sonatine (Adagio) C-Moll Wo O 43a, Prag 1796
-Air ruse, Variationen uber ein russisches Volkslied, A-Moll op.107,7, Wien 1817-1818
* Franz Schubert (1797-1828)
-Lied der Migmon A-Moll D 877/4, Wien Janua 1826
-Sonate A-Moll D821, Wien November 1824
* Vincenz Schuster
- Drei Stucke (1825) fur Guitarren - Violoncello und Guitarre, Wien 1825
* Vincenz Schuster
- Drei Stucke (1825) fur Guitarren - Violoncello und Guitarre, Wien 1825
* Lois Spohr(1784-1859)
-Tempo di Polacca A-Dur aus seiner Oper Faust
* Bernhard Romberg(1767-1841)
- Adagio E-Dur
* Ukarainisch/deutsch
-Moderato A-Moll (Schone Minka)
* Frederic Burgmuller(1806-1874)
- Noctune (Andantione) A-Moll , A-Due, Paris, Mainz 1840
出典: Der Arpeggione, Cavalli Records CCD 242ジャケット解説より引用


19世紀に考案され数十年で姿を消した弦楽器「アルペジオーネ」を復元:神戸の田中 / FDSファミリー

音楽 > 芸術鑑賞

 数十年で姿を 消した弦楽器  アルペジオーネ  初めて耳にした 楽器名です。

 チェロと違い 6弦の弦楽器ですが 足ではさみ、弓で弾くのは初期のチェロと 同じです。

<写真>復元された弦楽器「アルペジオーネ」
弾いているのは、復元した篠山市の古楽器職人「平山さん」(神戸新聞)

シューベルトが作曲した「アルペジオーネソナタ」で音楽ファンの間では有名。
でも、クラシックファンの私の知らない弦楽器でした。
現存するのは、世界に数台しかないという弦楽器「アルペジオーネ」
地元兵庫県篠山市の古楽器職人「平山照秋」さんが見事に復元されました。

形や大きさ、6弦であることなどが「ギター」に近いそうですが、足ではさみ弓
で弾くは「チェロ」に似ています。(初期のチェロは足ではさむ)
24個のフレットがあることで、高音域まで軽やかに響かせることができる
そんな弦楽器が「アルペジオーネ」です。

高音域まで響かせる弦楽器が、なぜ数十年で姿を消したのでしょうか。
アルペジオーネは、音の強弱が出しにくいバロック楽器の特徴を持ちます。
音の強弱のある伸びやかな響きが求めるようになった時代にマッチせず
アマチュア向き楽器と評価されたため、プロが使わないからだとありました。

<アルペジオーネの記事:芸術情報>

『平山さんは、ビオラ・ダ・ガンバやチェンバロなど、
 幅広いバロック楽器が制作できる世界でも珍しい楽器職人。
 アルペジオーネソナタを作曲された当時に近い楽器で演奏したいと、
 数年前から復元を計画し、2003年に
 ドイツのベルリン博物館から図面を取り寄せた。
 東京都の愛好家が購入する話がまとまり、今年7月から制作を始めた。

 1820年ごろの音を再現するため、
 材質のドイツ松とカエデの厚さや削り方に工夫した。
 復元品は長さ1メートル10センチ。

 シューベルトは、楽器の完成と同じ1823年に
 アルペジオーネソナタを作曲。
 繊細な旋律で今も人気が高く、
 はかなく消えた楽器の存在を現代に伝える。』


復元した平山さんは「もう一台作って、自分で弾きたい」と話しておられます。
来年の秋には、丹波地域で開かれているシューベルトゆかりの国際音楽祭
「シューベルティアーデたんば」の舞台に立ちたいと考えているそうです。
本来の楽器「アルペジオーネ」の音色、この耳で聴きたいと思ってきました。

地元の国際音楽祭、来年の秋「シューベルティアーデたんば」で楽器とご対面
忘れないように2007年の手帳に書き記しておきましょう。

出典:ブログより転載
2006年12月9日(土) at 22:36 / コメント( 0 )/ トラックバック( 0 )
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平山照秋氏が制作のアルペジョーネ

       

平山照秋氏はいままでヴィオラダ・ガンバの制作と演奏もなさっておられる。
このご経験からアルペジョーネには、ブルグミューラー作品もこの楽器に合うようだと評価しておられ、
アルペジョーネの世界がさらに広がる明るい情報といえよう。

出典:平山氏のHPより引用
http://www.h3.dion.ne.jp/~kogakki/sakusei_gakki/sakusei_gakki.html


平山照秋氏のHPから、「アルペジョーネ・ソナタ」が聴けます

http://www.city.sasayama.hyogo.jp/hitohira.html


アルペジョーネの音色は以下でお聴きください


Mr.Nicolas Deletaille, Schubert arpeggione sonata taken from his last arpeggine concert in Brussels: http://fr.youtube.com/watch?v=6UTXRFfGAb0

Schubert Arpeggione Sonata on arpeggione (excerpt)




 

Arpeggione, Bowing,Okumura_model, March 17. 2009




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